7・08『ランナーのアウト』次の場合、ランナーはアウトとなる。
(a)
 (1)ランナーが、野手のタッチを避けて、塁間を結ぶ直線から3フィート離れて走った場合。 ただし、打球を処理している野手を妨げないために、塁間を結ぶ直線から3フィート以上離れて走った場合は、この限りではない。
 (2)1塁に触れてすでにランナーとなったプレーヤーがベースラインから離れ、次の塁に進もうとする意思を明らかに放棄した場合。
「原注」1塁に触れてすでにランナーとなったプレーヤーが、もはやプレイは続けられていないと思い込んで、ベースラインを離れてダッグアウトか守備位置の方へ向かったとき、審判員がその行為を走塁する意思を放棄したとみなすことができると判断した場合、そのランナーはアウトを宣告される。この際たとえアウトが宣告されても他のランナーに関してはボールインプレイの状態が続けられる。 この規則は、次のプレイなどに適用される。
例:無死または1死で、同点の最終回、ランナー1塁のときバッターが競技場の外へサヨナラホームランを打った。1塁ランナーは2塁を過ぎてからホームランで自動的に勝利が決まったと思い込み、ダイヤモンドを横切って自分のベンチに向かった。この間、バッターは本塁に向かって進んでいたような場合、ランナーは、“次塁に進もうとする意思を放棄した”という理由で、アウトを宣告され、バッターランナーは各塁を踏んで行ってホームランを生かすことが許される。もし、2死後ならば、ホームランは認められない(7・12参照)。これはアピールプレイではない。
例:ランナーが1塁または3塁でタッチされてアウトを宣告されたと思い込んでダッグアウトに向かいだし、依然としてアウトだと思い込んでいる様子が明らかだと審判員が認めるのに適当な距離まで進んでいるときには、ランナーは進塁を放棄したという理由でアウトが宣告される。
「注1」“塁間を結ぶ直線から各3フィート”というのは、塁間を結ぶ直線を中心として左右へ各3フィート、すなわち6フィートの幅の地帯を指し、これが通常ランナーの走路とみなされる場所である。従って、ランナーが、野手のタッチを避けてこの走路内から走路外に出たときには、その身体にタッチされていなくてもアウトになる。ランナーがこの走路外にいたときにタッチプレイが生じた場合、走路から遠ざかるようにして野手のタッチを避けたときは、直ちにアウトになり、走路内に戻るようにして野手のタッチを避けたときにランナーと塁とを結ぶ直線から3フィート以上離れればその身体にタッチされていなくてもアウトになる。
「注2」本項(1)の後段は、野手がランナーの走路内で打球を処理しているとき、これを妨げないためにランナーが走路外を走っても、アウトにならないことを規定しているものであって、打球処理後にタッチプレイが生じたときには、本項(1)の前段の適用を受けることはもちろんである。
「注3」フォースの状態におかれているランナーに対しては、本項(2)を適用しない。
(b)ランナーが、送球を故意に妨げた場合または打球を処理しようとしている野手の妨げになった場合。
「原注1」打球(フェアボールとファウルボールとの区別なく)を処理しようとしている野手の妨げになったと審判員によって認められたランナーは、それが故意であったか故意でなかったかの区別なくアウトになる。しかし、正規に占有を許された塁についていたランナーが、フェア地域とファウル地域との区別なく守備の妨げになった場合、審判員がその妨害を故意と判断したときを除いて、そのランナーはアウトにはならない。審判員が、その妨害を故意と宣告した場合には次のペナルティを科す。無死または1死のときは、そのランナーとバッターとにアウトを、2死後のときはバッターにアウトを宣告する。
「注1」“野手が打球を処理する”とは、野手が打球に対して守備しはじめてから打球をつかんで送球し終わるまでの行為をいう。従って、ランナーが前記のどの守備行為でも妨害すれば、打球を処理しようとしている野手を妨げたことになる。
「注2」ランナーが6・05(k)、7・08(a)項規定の走路を走っていた場合でも、打球を処理しようとする野手の妨げになったと審判員が判断したときには、本項の適用を受けてランナーはアウトになる。
「問」1死ランナー3塁のとき、3塁に触れているランナーが、3塁横に上がったファウルフライを捕らえようとする3塁手の守備の妨げになったので、3塁手は捕球できなかった。いかに処置すべきか。
「答」そのランナーが故意に守備を妨げたと審判員が認めれば、そのランナーとバッターにアウトを宣告する。
「原注2」3・本塁間で狭撃されたランナーが妨害によってアウトを宣告された場合には、後位のランナーはその妨害行為発生以前に、たとえ3塁を占めることがあってもその占有は許されず、2塁に帰らなければならない。また2・3塁間で挟撃されたランナーが妨害によってアウトになった場合も同様、後位のランナーは1塁に帰らなければならない。妨害が発生した場合には、いずれのランナーも進塁できないこと及びランナーは正規に次塁に進塁するまでは元の塁を占有しているものとみなされることがその理由である。
「注」ランナー1・3塁のとき3塁ランナーが3・本塁間で挟撃され、妨害によってアウトを宣告された場合、1塁ランナーがその妨害行為発生以前に2塁を占めておれば、1塁ランナーには2塁の占有が許される。
(c)ボールインプレイでランナーが塁を離れているときにタッチされた場合。
「付記1」バッターランナーが1塁に走るときは、直ちに帰ることを条件としてならば、オーバーランまたはオーバースライドして1塁を離れているときタッチされても、アウトにはならない。
「付記2」ランナーがいったん安全に塁に達した後、ランナーの衝撃で塁のバッグが定位置から離れたときはそのランナーに対していかなるプレイもできない。
「付記3」あるプレイ中に塁のバッグまたはホームプレートが定位置から離れたとき、引き続いて、次のランナーが進塁してきて、元の塁が置かれていた地点に触れるかまたはその地点にとどまれば、そのランナーは正規に塁に触れたものまたは正規に塁を占有したものとみなされる。
「注1」フォアボールを得たバッターが1塁に進むに際しては、直ちに帰ることを条件としてなら、1塁に触れた後走り越すことは許される。
「注2」野手がランナーにタッチしようとするときには、ランナーもアウトを免れようと、激しく触塁する場合が多く、野手とランナーとが衝突した結果、野手がボールを落としたときは、タッチ後にボールを確実に保持していないことになるから、ランナーはアウトにはならない。また野手がランナーにタッチした後も、これを確実に握っていなければならず、たとえボールを地上に落とさなくても、手の上でジャッグルなどした場合には、ランナーはアウトにはならない。野手がタッチした後、どのくらい確保すればよいかは、一に審判員の判断に待つべきである。(2・15参照)
(d)フェア飛球、ファウル飛球が正規に捕えられた後ランナーが帰塁するまでに野手に身体またはその塁にタッチされた場合。ただし、ピッチャーがバッターへの次の1球を投じてしまうか、またはたとえ投球しなくてもその前にプレイをしたりプレイを企ててしまえば帰塁をしていないと理由によってランナーがアウトにされることはない。この場合は、アピールプレイである。
「原注」ランナーは、ファウルチップの際はタッグアップする必要はないから、盗塁することもできる。しかし、チップしたボールをキャッチャーが捕えなかった場合は、ファウルボールとなるから、ランナーは元の塁へ戻らなければならない。
「注」飛球が捕えられたとき、ランナーが帰塁しなければならない塁とは、進塁の起点となる塁、すなわち、ピッチャーの投球当時ランナーが占有していた塁を指す。
(e)バッターがランナーとなったために進塁の義務が生じたランナーが次の塁に触れる前に野手がそのランナーまたはその塁にタッチした場合。(このアウトはフォースアウトである)ただし、フォースプレイにおいて後位のランナーが先にアウトになればフォースの状態でなくなり前位のランナーには進塁の義務がなくなるから身体にタッチされなければアウトにはならない。またランナーが塁に触れた後、余勢でオーバースライドまたはオーバーランした場合には塁に触れた瞬間に進塁の義務を果たしたことになるから、そのランナーは身体にタッチされなければアウトにはならない。(このアウトはフォースアウトではなく、タッチアウトである)しかし、進塁の義務を生じたランナーが次塁に触れた後どのような理由にせよ、その塁を捨ててもとの塁の方へ離れた場合は、再びフォースの状態におかれるから野手にその身体または進塁すべき塁にタッチされればそのランナーはアウトになる。(このアウトはフォースアウトである)
「原注」オーバースライドまたはオーバーランは2塁及び3塁で起こり、1塁ではこの状態は起こらない。例えば、無死または1死でランナー1・2塁もしくは、1・2・3塁とする。打球は内野手に飛び、その内野手はダブルプレイを試みた。1塁ランナーは2塁への送球より早く2塁に触れたが、オーバースライドした。ボールは1塁にリレーされ、バッターはアウトになった。1塁手は、2塁ランナーが離塁しているのを見て2塁に送球してそのランナーをアウトにしたがその間に他のランナーは本塁に入った。
「問」これはフォースプレイか。バッターが1塁でアウトになったとき、フォースプレイでなくなったのか。このプレイ中に、2塁でランナーがアウトにされて第3アウトになる前に、本塁に入っていたランナーの得点は認められるか。
「答」フォースプレイではなく、タッチプレイであるから、得点は記録される。
「注1」この項は、フォースアウトの規定であり、バッターがランナーとなったために、塁にいたランナーに進塁の義務が生じたときに、
 野手が、
  @そのランナーが次の塁に触れる前に、その塁にタッチした場合
  Aそのランナーが次の塁に触れる前に、そのランナーにタッチした場合
  Bそのランナーが次の塁へ進もうとしないで元の塁にとどまっているときそのランナーにタッチした場合
 を指し、特にBの場合は、後位のランナーがアウトにならない限り、その塁の占有権はすでに失われているから、たとえそのランナーが塁に触れていても、野手がそのランナーにタッチすればアウトになる。
「注2」例えば、1塁ランナーが打球とともに走り出して、いったん2塁に触れた後、その打球が飛球として捕えられようとするのを見て、1塁へ戻ろうとしたとき、フライを落とした野手からの送球を受けた2塁手は、ランナーが再び2塁に達するまでに2塁にタッチした。この場合、はじめに2塁を踏んだことは取り消され、フォースアウトと認めれらる。
(f)ランナーが、内野手(ピッチャーを含む)に触れていないか、または内野手(ピッチャーを除く)を通過していないフェアボールに、フェア地域で触れた場合。この際はボールデッドとなり、バッターがランナーとなったため次塁への進塁が許されたランナーの他は、得点することも進塁することも認められない。(5・09f、7・09m参照)インフィールドフライと宣告された打球が、塁を離れているランナーに触れたときはバッター、ランナーともにアウトになる。
「例外」インフィールドフライと宣告された打球が、塁についているランナーに触れた場合、そのランナーはアウトにならず、バッターだけがアウトとなる。
「原注」2ランナーが同一のフェアボールに触れたときは、最初に触れた1人だけがアウトになる。これは、打球がランナーに触れたとき、直ちにボールデッドとなる。
「注1」バッターの打ったフェアボールが野手に触れる前にランナーに触れたときはランナーが守備を妨害しようとして故意に打球に触れた場合(併殺を行わせまいとして故意に打球を妨害した場合を除く)と走塁中やむなく触れた場合との区別なくランナーはアウトになる。また一旦内野手に触れた打球に対して守備しようとする野手をランナーが妨げたときには7・08(b)によってアウトにされる場合もある。
「注2」
@内野手を通過する前に、塁に触れて反転したフェアボールに、ランナーがフェア地域で触れた場合、そのランナーはアウトになり、ボールデッドとなる。
A内野手を通過した直後に、塁に触れて反転したフェアボールに、ランナーがその内野手の直後のフェア地域で触れた場合、この打球に対して他のいずれの内野手も守備する機会がなかった場合に限り、打球に触れたという理由でアウトにはならない。
「注3」一度塁に触れて反転したフェアボールが、ファウル地域でランナーに触れた場合は、そのランナーはアウトにはならず、ボールインプレイである。
「注4」本項でいう塁とは飛球が打たれたときのピッチャーの投球当時にランナーが占有していた塁をいう。
「注5」インフィールドフライと宣告された打球がランナーに触れた場合は、そのランナーが塁についていてもいなくても、ボールデッドとなる。
(g)無死または1死で、ランナーが得点しようとしたとき、バッターが本塁における守備側のプレイを妨げた場合。2死であればインターフェアでバッターがアウトとなり、得点は記録されない。(6・06(c)、7・09(a、d)参照)
「注1」ここにいう“本塁における守備側のプレイ”とは、野手(キャッチャーも含む)が、得点しようとしたランナーにタッチしようとするプレイ、そのランナーを追いかけてタッチしようとするプレイ及び他の野手に送球してそのランナーをアウトにしようとするプレイを指す。
「注2」この規定は、無死または1死で、ランナーが得点しようとした際、本塁における野手のプレイを妨げたときの規定であって、ランナーが本塁に向かってスターを切っただけの場合とか、一度本塁へは向かったが途中から引き返そうとしている場合には、バッターがキャッチャーを妨げることがあっても、本項は適用されない。例えば、キャッチャーがボールを捕らえてランナーにタッチしようとするプレイを妨げたり、ピッチャーが投手板を正規に外して、ランナーをアウトにしようとして送ったボール(投球でないボール)をバッターが打ったりして、本塁の守備を妨げた場合には、妨害行為を行ったバッターをアウトにしないで、守備の対象であるランナーをアウトにする規定である。
「注3」本項は、本塁の守備を妨げたのがバッターであった場合に限って適用されるのであって打撃を完了してバッターからランナーになったばかりでまだアウトにならないバッターが妨害を行ったときには適用されない。例えば、スクイズバントをしたバッターがバントした打球に触れるかまたは打球を処理しようとする野手の守備を妨げたために3塁ランナーが本塁でのアウトを免れることになったような場合には、バッターはすでにランナーとなっているから6・05(g)、7・08(b)によって、そのバッターランナーがアウトとなりボールデッドとなって、3塁ランナーをピッチャーの投球当時すでに占有していた塁、すなわち3塁へ帰らせる。バッターが第3ストライクの宣告を受けただけでまだアウトにならないとき及びフォアボールの宣告を受けたときの妨害に関しては、7・09(a)「注」に示されている。
(h)後位のランナーがアウトとなっていない前位のランナーに先んじた場合。(後位のランナーがアウトとなる。)
「注1」ボールインプレイ中に起きた行為(例えば、悪送球、ホームランまたは柵外に出たフェアヒットなど)の結果、ランナーに安全進塁権が認められた場合にも本項は適用される。
「注2」この項はランナーの位置が入れ代わったときに後位のランナーをアウトにすることを意味する。例えば2塁のランナーを甲、1塁のランナーを乙とすれば1塁ランナー乙が2塁ランナー甲を追い越したときはもちろん逆走の際など、2塁ランナー甲が1塁ランナー乙を追い越す形をとって、本来本塁から遠くにあるべき乙と近くにあるべき甲との位置が入れ代わった場合でも常に後位の乙がアウトになることを規定している。
(i)ランナーが正規に塁を占有した後に塁を逆走したときに守備を混乱させる意図あるいは試合を愚弄する意図が明らかであった場合。この際、審判員は直ちにタイムを宣告してそのランナーにアウトを宣告する。
「原注」ランナーがまだ占有していない塁に到達した後、飛球が捕らえられたと思ったり、元の占有塁に帰るようにおびき出されて元の塁に帰ろうとした場合、途中でタッチされればアウトになる。しかし、元の占有塁に帰りついたら、その塁についている限り、タッチされてもアウトにならない。
「注」例えば、1ゴロを打ったバッターが1塁手のタッチを避けようとして、側方に離れて走らない限り、逆走するようなことは差し支えないが、本塁に達するとアウトになる。
(j)ランナーが1塁をオーバーランまたはオーバースライドした後、直ちに1塁に帰塁しなかった場合。1塁をオーバーランまたはオーバースライドしたランナーが2塁へ進もうとする行為を示せば、タッチされればアウトになる。また1塁をオーバーランまたはオーバースライドしたランナーが直ちに帰塁しないでダッグアウトまたは自己の守備位置に行こうとした場合も、野手がランナーまたは塁にタッチしてアピールすればアウトとなる。
「原注」2死後、1塁に触れてオーバーランしたが、審判員によって“セーフ”の宣告を受けたバッターランナーは、規則4・09(a)を適用する上では、“1塁に達した”ことになり、“ただちに”1塁に帰塁しなかったために第3アウトになっても、このプレイ中にアウトより先に本塁に達していたランナーは、得点として認められる。
(k)ランナーが本塁に走り込むかまたは滑り込んだ際に、本塁に触れないで、しかも本塁に触れ直そうとしないときに、野手がボールを持って本塁に触れて審判員にアピールした場合。(7・10d参照)
「原注」本項は、本塁に触れなかったランナーがベンチに向かっており、アウトにするためにはキャッチャーがそのランナーを追いかけなければならないような場合に適用される。本塁を踏み損ねたランナーが、タッチされる前に踏み直そうと努力しているような普通のプレイが行われているときには適用されない。この場合には、ランナーはタッチされなければアウトにならない。