7・10『アピールアウト』 次の場合アピールすればランナーはアウトになる。
(a)飛球が捕らえられた後ランナーが再度の触塁(リタッチ)を果たす前に、身体あるいはその塁にタッチされた場合。
「原注」ここでいう“リタッチ”とは捕球後塁に触れた状態から次塁へスタートすることをいう。従って、塁の後方からスタートして走りながら塁に触れて次塁へ進もうとするいわばフライングスタートは正規のリタッチの方法ではない。
(b)ボールインプレイのときランナーが進塁または逆走に際して各塁に触れ損ねたとき、その塁を踏み直す前に身体または触れ損ねた塁にタッチされた場合。(7・02参照)
「付記」塁を空過したランナーは、
 (1)後位のランナーが得点してしまえばその空過した塁を踏み直すことは許されない。
 (2)ボールデッドのもとでは空過した塁の次の塁に達すればその空過した塁を踏む直すことは許されない。
「原注」
例:バッターが競技場の外へ場外ホームランを打つかスタンドに入る2塁打を打って1塁を空過した(ボールデッド)。=バッターは2塁に触れる前ならば誤りを正すために1塁に帰ることはできる。しかし、2塁に触れてしまうと1塁に戻ることができない。守備側がアピールすれば1塁でアウトが宣告される。
例:バッターがショートにゴロを打ちショートはスタンドに飛び込む悪送球をした(ボールデッド)。=バッターは1塁を空過したが悪送球によって2塁が与えられた。バッターランナーは審判員によって2塁が与えられても2塁に進む前に1塁に触れなければならない。
 いずれもアピールプレイである。
「注1」本項「付記」(1)は、ボールインプレイとボールデッドとを問わず適用される。
「注2」本項「付記」の場合、塁を空過したランナーはアピールがなければアウトにならない。
「注3」本塁を空過したランナーはボールデッドのもとでは、ピッチャーが新しいボールかもとのボールを持って正規に投手版に位置すれば本塁を踏み直すことは許されない。
「注4」本項「付記」は飛球が捕らえられたときのリタッチが早かったランナーにも適用される。
(c)ランナーが1塁をオーバーランまたはオーバースライドした後、直ちに帰塁しないとき身体または塁にタッチされた場合。(7・08j参照)
(d)ランナーが本塁に触れずしかも本塁に触れ直そうとしないとき本塁にタッチされた場合。(7・08k参照)
本項規程のアピールは、ピッチャーがバッターへの次の1球を投じるまで、またはたとえ投球しなくてもその前にプレイをしたりプレイを企てるまでに行わなければならない。イニングの表または裏が終わったときのアピールは、守備側チームのプレーヤーが競技場を去るまでに行わなければならない。アピールはその消滅の基準となるプレイまたはプレイの企てとはみなされない。 ピッチャーがアピールのために塁に送球しスタンドの中などボールデッドの箇所にボールを投げ込んだ場合には、同一ランナーに対して同一塁についてのアピールを再びすることは許されない。第3アウトが成立した後、他にアピールがあり審判員がそのアピールを支持した場合には、そのアピールアウトがそのイニングにおける第3アウトとなる。また、第3アウトがアピールによって成立した後でも守備側チームは、このアウトより他に有利なアピールプレイあればその有利となるアピールアウトを選んで、先の第3アウトと置き換えることができる。“守備側チームのプレーヤーが競技場を去る”とあるのは、ピッチャー及び内野手がベンチまたはクラブハウスに向かうためにフェア地域を離れたことを意味する。
「7・10原注」アピールするときにピッチャーがボークをした場合にはその消滅の基準となるプレイとみなされる。アピールは言葉で表現されるか審判員にアピールとわかる動作によってその意図が明らかにされなければならない。プレーヤーがボールを手にして塁に何気なく立ってもアピールをしたことにはならない。アピールが行われているときはボールデッドではない。
「注1」アピール権消滅の基準となるプレイにはピッチャーのプレイはもちろん野手のプレイも含まれる。例えばバッターがワンバウンドで外野席に入るヒットを放って2塁に達したが途中1塁を空過していた。プレイ再開後ピッチャーが1塁へアピールのために送球したところ悪送球となってプレイングフィールド内を転々とした。これを拾った1塁手が1塁でアピールをすることはできるが2塁ランナーがその悪送球を利して3塁へ走ったのを見て3塁へ送球してしまえば1塁でのアピール権は消滅する。
「注2」攻守交代の場合と試合終了の場合との区別なく、いずれの場合でもピッチャー及び内野手がフェア地域を離れたときにアピール権が消滅することとする。アマチュア野球では試合終了後の場合に限って両チームが本塁に整列したときアピール権は消滅することとする。
「注3」アピールするには言葉と動作とではっきりとその旨を表示しなければならない。なお、ある一つの塁を2人以上のランナーが通過した際その塁の空過を発見してアピールするには、どのランナーに対するアピールであるかを明示しなければならない。例えば、甲、乙、丙の3ランナーが3塁を通過し乙が3塁を踏まなかったときは、乙に対するアピールである旨を明示しなければならないが、もしこのとき甲が空過したと誤って申し出て審判員に認められなかった場合でも、その塁を空過したランナーの数まではアピールを繰り返して行うことができる。
「問」1死ランナー1・3塁のときバッターは外野に大飛球を打ったので2ランナーはともに進塁し初めたが、外野手はこの飛球を好捕した。離塁の少なかった3塁ランナーは3塁へ帰って捕球後改めて本塁へ入った。1塁ランナーは2塁に触れた後3塁近くまで行ったが1塁に帰ろうと逆走し始めたので外野手は2塁に送球、2塁手は1塁ランナーが2塁に触れる前に塁上でボールを持ってアピールした。ダブルプレイか。
「答」ダブルプレイではない。そのランナーが1塁に帰るためには2塁を通る必要があるからといって2塁にタッチしてもアウトにはできない。そのランナーにタッチするかまたは進塁の起点となる塁、すなわち1塁にタッチしなければならない。
「問」1死ランナー1塁のときバッターが外野へ大飛球を打ちランナーが2塁を回って3塁近くまで行ったとき飛球が捕らえられたので2塁に触れないで1塁へ帰ろうとした。 どんな方法でアピールをすればランナーをアウトにできるか。
「答」ランナーにタッチするか2塁または1塁にタッチしてアピールすればよい。
「問」2死ランナー2塁のときバッターが3塁打を打ちランナーを得点させたが、バッターは1塁も2塁も踏まなかった。守備側は2塁にタッチしてアピールしアウトが宣告された。得点となるか。
「答」得点は認められる。しかし守備側が最初から1塁でアピールしておれば得点は認められない。また2塁から1塁に転送球して再びアピールすれば1塁でのアピールアウトを先の第3アウトと置き換えることができるから、得点とはならない。
「問」1死ランナー1・2塁バッターが右翼へ大飛球を打ったときヒットになると思った2ランナーはフライが飛んでいる間進塁し続け、右翼手がこれを捕らえたにもかかわらず、2塁ランナーはそのまま本塁を踏んだ。しかし1塁ランナーは捕球されたのを見て1塁に引き返そうとした。右翼手は1塁へ送球、1塁手は1塁ランナーが帰塁するより先に塁にタッチしてアウトにした。2塁ランナーは1塁ランナーがアウトになるより先に本塁を踏んでいるがその得点は認められるか。
「答」守備側が2塁でアピールしない限り2塁ランナーの得点は認められる。しかし、主義側はアピールによる第3アウトの成立後であってもこのアウトよりも有利となるアピールアウトを先の第3アウトと置き換えることができるから2塁でアピールすればリタッチを果たしていない2塁ランナーはアウトになり得点とはならない。